変動費と固定費の違いを解説|管理・削減方法と損益分岐点のポイント
変動費と固定費の違いを解説|経営管理・削減方法とポイント
事業を運営する上で、コストの性質を正確に把握することは経営判断の基本です。その中でも「変動費」と「固定費」の区別は、利益構造を理解し、適切な削減方法を検討するための出発点になります。
この記事では、変動費・固定費それぞれの定義と具体例、損益分岐点との関係、管理・削減のポイントを解説します。
この記事のアドバイザー
記事監修アドバイザー認定済み田口 秀一(タグチ シュウイチ)外資系金融機関で10年以上の経験を通し、主に「投資初心者」向けに、「賢い家計の見直し術」から「ゼロからの投資の始め方」などのオーダーメードでサポートをしてきました。何事も興味を持ったタイミングが始め時です。不安もあるかもしれませんが、この機会に一緒に最初の一歩を踏み出しましょう!得意分野: 資産運用・生命保険
変動費と固定費とは
変動費とは
変動費とは、売上高や生産量の増減に比例して増減する費用のことです。事業活動の規模が大きくなれば増加し、小さくなれば減少するという特徴があります。
変動費の主な例:
材料費(製造業において製品1単位あたりにかかる原材料のコスト)
仕入原価(販売する商品の仕入れにかかる費用)
外注費(生産量・案件数に応じて発注する外部委託費用)
販売手数料(売上に連動して発生するコミッション)
梱包・配送費(販売数量に応じて変動する物流コスト)
製造業では材料費が代表的な変動費ですが、サービス業では売上に連動する外注費や手数料が変動費に分類されることが多いです。
固定費とは
固定費とは、売上高や生産量の増減に関わらず、毎月一定額発生する費用のことです。事業を継続している限り、売上がゼロでも発生し続けます。
固定費の主な例:
人件費(正社員の給与・社会保険料・役員報酬)
家賃・地代(オフィス・工場・店舗の賃料)
減価償却費(設備・機械・システムへの投資を期間按分したもの)
リース料(車両・機器のリース費用)
保険料
通信費・システム利用料(月額固定のクラウドサービスなど)
固定費は売上の増減によって変わらないため、売上が下がっても固定費は発生し続けます。これが利益を圧迫する主な原因になります。
準変動費・準固定費という考え方
実務では、完全に変動費または固定費のどちらかに分類しにくいコストも存在します。
準変動費は、基本部分(固定)+使用量に応じた変動部分で構成されるコストです。電気代・水道代・電話料金などが該当します。
準固定費は、一定の生産量・売上規模までは固定ですが、ある水準を超えると段階的に増加するコストです。たとえばパートタイム人件費は、ある程度の増産まで現行スタッフで対応できますが、さらに増産する場合は追加採用が必要になります。
変動費と固定費の管理が重要な理由
損益分岐点の把握に直結する
損益分岐点とは、売上高とコストの合計が等しくなる点、つまり利益がゼロになる売上水準のことです。損益分岐点の計算には、変動費と固定費の正確な把握が前提になります。
損益分岐点売上高の基本的な計算式は次のとおりです。
損益分岐点売上高 = 固定費 ÷(1 − 変動費率)
ここで変動費率とは、売上高に対する変動費の割合です。
変動費率 = 変動費 ÷ 売上高
例えば、固定費が月100万円、変動費率が40%の事業であれば、損益分岐点売上高は次のように計算されます。
100万円 ÷(1 − 0.4)= 約167万円
この水準の売上を超えると利益が生まれ、下回ると赤字になります。事業の規模・収益性を判断する上で、損益分岐点は経営上の重要な指標の一つです。
利益改善の方向性が変わる
変動費と固定費では、削減・管理のアプローチが異なります。
変動費は売上・生産量に比例するため、単価交渉・仕入先の見直し・製造プロセスの効率化などによって「1単位あたりのコスト」を下げることが中心になります。
固定費は売上規模に関わらず発生するため、不要なコストの解約・スリム化・業務のデジタル化による削減が有効です。固定費が大きいほど損益分岐点が高くなり、利益が出にくい構造になります。
変動費の削減・管理方法
仕入・外注コストの見直し
材料費・仕入原価は、サプライヤーとの交渉・複数社からの相見積もり・まとめ買いによるスケールメリットの活用などで削減できる余地があります。ただし、品質への影響を確認しながら進めることが重要です。
外注費については、外注先の比較・業務仕様の整理・内製化の可否の検討が管理のポイントです。外注に出しているすべての業務が外注の必要があるかを定期的に見直すことで、コスト構造を整理できます。
変動費率の把握と製品・サービス別の分析
複数の製品・サービスを提供している企業では、製品・サービスごとに変動費率を把握することが大切です。変動費率が高い(利益率が低い)製品に経営資源を集中させ続けると、売上が伸びてもコストも同様に増加し、利益が積み上がりにくくなります。
製品別・サービス別の原価計算を定期的に行い、収益性の高い事業領域に資源を集中させる判断材料にします。
固定費の削減・管理方法
人件費の見直し
人件費は固定費の中でも最も大きな割合を占めることが多いです。削減の方法としては、残業の削減・業務の効率化・採用計画の見直しなどが挙げられます。一方で、人件費削減は従業員のモチベーションや組織力に影響するため、生産性向上を伴わない単純な削減は逆効果になることもあります。
業務プロセスの改善・デジタル化によって「同じ人員でより多くの成果を出す」方向性が、持続的な固定費管理につながります。
オフィス・設備コストの最適化
賃料は固定費の大きな項目です。テレワークの普及を背景に、オフィスの規模を見直した企業も多くあります。使用頻度の低い設備・システムのリース・サブスクリプション契約を定期的に確認することで、不要なコストを発見できます。
クラウドサービスの活用によるコスト変動化
これまで固定費として発生していたシステム費用(自社サーバー・パッケージソフトウェアなど)を、クラウドサービスに切り替えることで、利用量に応じた変動費として扱えるケースがあります。初期投資が不要になり、スケールに合わせてコストを調整しやすくなるというメリットがあります。
ただし、クラウドへの移行は業務フローの変更を伴うため、導入前の設計と運用体制の整備が必要です。
固定費の「見える化」と定期レビュー
固定費が積み重なる原因の一つは、個別には小さなコストが積み重なって合計が把握しにくくなることです。月次の固定費一覧を作成し、定期的に内容を確認するだけでも、不要なサービスの解約・見直しの機会が生まれます。
変動費・固定費の管理に役立つ会計・経営管理の考え方
管理会計と財務会計の違い
財務会計は、外部(投資家・金融機関・税務当局など)への報告を目的とした会計です。一方、管理会計は経営者・管理者が社内の意思決定に活用するための会計です。
変動費・固定費の区分や損益分岐点分析は、主に管理会計の領域です。法定の報告書類(損益計算書など)には変動費・固定費の区分が必ずしも明示されないため、自社内で別途管理するためのフォーマットを作成することが多いです。
直接原価計算と全部原価計算
製造業や原価計算が必要な事業では、直接原価計算(変動費のみを製品原価として集計する方法)と全部原価計算(固定費を含めてすべての製造コストを製品原価に集計する方法)の違いを理解しておくと、管理上の判断精度が上がります。
直接原価計算は損益分岐点分析や利益計画に使いやすく、事業の採算性判断に適しています。
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※この記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の経営・税務・会計アドバイスではありません。具体的なご判断はご自身または専門家にご相談の上で行ってください。