住宅ローンの繰り上げ返済:一部返済のメリット・注意点・手続きを解説
住宅ローンの繰り上げ返済とは?一部返済のメリット・手続き・タイミングを解説【2026年版】
住宅ローンを組んでいる方が「まとまったお金が入ったとき」「毎月の返済を楽にしたいとき」に検討するのが繰り上げ返済です。利息を大きく減らせる反面、やり方やタイミングを間違えると住宅ローン控除のメリットを失ってしまうことがあります。
この記事では、繰り上げ返済の仕組み・2種類の方法の違い・メリット・注意点・銀行での手続きまで、わかりやすく解説します。
この記事のアドバイザー
記事監修アドバイザー認定済み田口 秀一(タグチ シュウイチ)外資系金融機関で10年以上の経験を通し、主に「投資初心者」向けに、「賢い家計の見直し術」から「ゼロからの投資の始め方」などのオーダーメードでサポートをしてきました。何事も興味を持ったタイミングが始め時です。不安もあるかもしれませんが、この機会に一緒に最初の一歩を踏み出しましょう!得意分野: 資産運用・生命保険
1. 繰り上げ返済とは何か
住宅ローンの「繰り上げ返済」とは、毎月の返済とは別に、ローンの一部もしくは全額を返済する手続きのことです。繰り上げ返済された金額は、元金部分の返済に充てられますので、その元金にかかるはずだった利息も減り、総返済額を抑えることができます。
通常の毎月返済は「元金+利息」を支払いますが、繰り上げ返済した分は全額が元金に充当されます。元金が減ると、その先にかかるはずだった利息がそのまま消えるため、総支払額を減らせる仕組みです。
繰り上げ返済には「一部繰り上げ返済」と「全部繰り上げ返済(一括完済)」があり、一部繰り上げ返済にはさらに2つの方法があります。
2. 2種類の一部繰り上げ返済の違い
期間短縮型
元金が減った分、毎月の返済額はそのままに返済期間を短くする方法です。
期間短縮型は、一部繰り上げ返済をすることで返済期間を短くするタイプの繰り上げ返済です。住宅ローンを組んだ際に最終返済日が定年退職後になる予定の人は、資金に余裕がある時に期間短縮型の繰り上げ返済をすることで、定期的な収入がある現役世代のうちに完済が可能になる場合があります。
特徴:
利息の削減効果が2種類の中で大きい
完済時期が早まる
毎月の家計負担はすぐには変わらない
返済額軽減型
返済期間はそのままに、毎月の返済額を下げる方法です。
返済額軽減型は、元金の減少分とそれに伴い軽減される利息分が、毎月の返済額から引き下げられるタイプの繰り上げ返済です。返済期間(完済予定日)は変わりませんが、次の月の返済額がすぐに下がるため、一部繰り上げ返済をした実感が湧きやすい方法だといえます。
特徴:
毎月の返済負担がすぐに軽くなる
完済時期は変わらない
利息削減効果は期間短縮型より小さい
| 期間短縮型 | 返済額軽減型 | |
|---|---|---|
| 毎月の返済額 | 変わらない | 下がる |
| 返済期間 | 短くなる | 変わらない |
| 利息削減効果 | 大きい | 小さい |
| 向いている人 | 総返済額を減らしたい方 | 毎月の家計を楽にしたい方 |
3. 繰り上げ返済のメリット
メリット1:利息を大幅に削減できる
繰り上げ返済の最大のメリットです。特に借り入れ初期は利息の割合が高いため、早いタイミングで繰り上げ返済をするほど削減できる利息が大きくなります。
具体的なイメージ:借入3,000万円・金利1.5%・35年返済のケースで、5年目に300万円を期間短縮型で繰り上げ返済した場合、総利息を100万円以上削減できることがあります(条件により異なります)。
メリット2:返済期間を短縮できる(期間短縮型の場合)
「返済期間短縮型」は、ローンの完済時期が早まるというメリットがあります。定年退職までに住宅ローンを完済したいと考える方や、老後の生活資金に余裕を持たせたいと考えている方にとっては特に有効な選択肢です。
定年が60歳で住宅ローンが65歳完済予定の方が、繰り上げ返済によって60歳完済にできれば、老後の家計設計が大きく変わります。
メリット3:毎月の返済負担を軽減できる(返済額軽減型の場合)
「返済額軽減型」は、毎月の返済額が減るというメリットがあります。教育費の増加が見込まれる場合や、返済途中で金利が上昇して毎月の返済額が増えてしまった場合などでも、毎月の返済額を減らせれば、家計に余裕も生まれるでしょう。
4. 繰り上げ返済の注意点
注意点1:住宅ローン控除の期間中は慎重に
現在の住宅ローン控除の控除率は0.7%(2026年5月現在)なので、住宅ローン金利が0.7%を下回っているなら、繰り上げ返済をせずに住宅ローン控除を受けるほうが得です。
住宅ローン控除とは、年末のローン残高に応じて所得税・住民税が軽減される制度で、控除率は0.7%(2022年以降の新築・中古住宅入居の場合)、控除期間は最大13年間です。
この控除率と住宅ローン金利を比較することが重要です。
| 状況 | 判断の目安 |
|---|---|
| ローン金利が0.7%以下 | 控除期間終了まで繰り上げ返済を待つほうが得 |
| ローン金利が0.7%超 | 繰り上げ返済の利息削減効果が控除上回る場合あり |
金利0.7%以上で住宅ローンを借りている場合は、住宅ローン控除の減少額よりも繰り上げ返済の利息軽減効果のほうが高いのです。一方、金利0.7%よりも低い住宅ローンを借りていて、住宅ローン控除を最大限活用できている場合は、一般的に住宅ローン控除が終わってから、まとめて繰り上げ返済したほうがおトクになるといえそうです。
注意点2:返済期間が10年を切ると住宅ローン控除が受けられなくなる
住宅ローン控除を受けるためには、住宅ローンの返済期間が10年以上であることが必要です。繰り上げ返済により返済期間が10年を切ってしまうと控除が受けられなくなります。利息負担額の軽減だけでなく、受けられる控除総額も合わせて検討する必要があります。
期間短縮型で繰り上げ返済をする際は、残り返済期間が10年を切らないよう注意しましょう。
注意点3:手元資金を使い切らない
「借金は早く返してしまいたい」というのは多くの人が持つ想いです。しかし、繰り上げ返済を急ぐあまり、ライフイベントに必要な資金が足りなくなってしまわないように注意しましょう。資金が足りないために、住宅ローンよりも高い金利で借り入れをすることになってしまったら、本末転倒です。
緊急予備資金(生活費の3〜6ヶ月分)は必ず手元に残した上で、余裕資金を繰り上げ返済に充てる考え方が基本です。
注意点4:団体信用生命保険(団信)への影響
団信の保険期間は住宅ローンの借入期間に連動しているため、期間短縮の繰り上げ返済をすると保険期間も短くなります。団信は債務者の死亡・高度障害時にローン残高を完済してくれる保険です。早期完済によって保険期間が短くなることを把握しておきましょう。
注意点5:手数料の有無を確認する
金融機関によっては、繰り上げ返済の都度手数料がかかります。手数料額は金融機関や返済方法(窓口やインターネットバンキングなど)によって異なりますが、コスト負担が発生する可能性がある点に注意しましょう。こまめに繰り上げ返済を行うと、結果的に手数料負担が重くなってしまう事態になりかねません。
インターネットバンキング経由での繰り上げ返済は手数料無料としている銀行も多いですが、窓口手続きでは5,500〜44,000円程度の手数料がかかる場合があります。ご利用の銀行の条件を事前に確認しましょう。
5. 繰り上げ返済のタイミング:いつ行うのが最も効果的か
基本:早いほど利息削減効果が大きい
住宅ローンの繰り上げ返済のタイミングは、早い時期に行うほど利息の軽減効果が高まります。住宅ローンの総支払額を減らしたいなら、できるだけ早いうちに繰り上げ返済をするのがおすすめです。
元金残高が多い借り入れ初期に繰り上げ返済することで、それ以降の全返済期間に渡る利息が削減されます。
住宅ローン控除期間中の判断基準
ローン金利が0.7%以下の場合:控除期間(最大13年)が終わってからまとめて繰り上げ返済するほうが有利な場合が多い
ローン金利が0.7%超の場合:控除期間中でも繰り上げ返済の効果が上回る場合がある
ただし、実際の有利・不利は借入額・金利・残期間・税額によって変わるため、借り入れ時期、借入金利、借入額によってどちらが有利かは異なるため、具体的に計算をしてみることが大切です。
ボーナス・退職金・相続などまとまった資金が入ったとき
まとまった資金が入ったタイミングは繰り上げ返済の好機です。ただし、その資金を全額充てることが家計全体にとって最善か、緊急予備資金や他のライフイベント費用(教育費・老後資金など)とのバランスを確認した上で判断しましょう。
6. 銀行での繰り上げ返済の手続き方法
インターネットバンキング(最も手軽)
多くの銀行で、インターネットバンキングから繰り上げ返済の申し込みが可能です。手数料が無料または安いことが多く、24時間手続きできます。手続きの流れは以下の通りです。
インターネットバンキングにログイン
住宅ローンのメニューから「繰り上げ返済」を選択
返済種別(期間短縮型 or 返済額軽減型)を選ぶ
返済金額と返済希望日を入力
確認・送信
窓口・電話での手続き
インターネットバンキングを利用していない場合や、複雑な条件確認が必要な場合は窓口または電話での手続きになります。手数料が発生するケースが多いため、金額を確認しておきましょう。
7. 変動金利の場合:金利上昇局面での繰り上げ返済の考え方
日本銀行は2024年以降、段階的に政策金利を引き上げており、変動金利型住宅ローンの適用金利も上昇傾向にあります。変動金利で住宅ローンを組んでいる方は、以下の点を確認してください。
現在の適用金利と住宅ローン控除の控除率(0.7%)の大小関係
金利上昇により毎月の返済額が増加した場合の家計余力
借り換えと繰り上げ返済のどちらが有利か
金利が大きく上昇した場合は、繰り上げ返済よりも借り換えで金利を下げるほうが効果的なケースもあります。
住宅ローンの繰り上げ返済は、家計全体のお金の流れを見た上で判断する必要があります。「いくら繰り上げ返済すれば、老後資金や教育費と両立できるか」を整理したい方は、国家資格を持つFPに無料で相談できるHabittoのアドバイザーに話してみてください。住宅ローンの返済計画から家計全体のバランスまで、一緒に考えてもらえます。無理な勧誘は一切ありません。
※この記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の金融アドバイスではありません。住宅ローン控除の適用条件や控除額は、入居時期・借入条件によって異なります。具体的な判断は、ご利用の金融機関または税理士・FPにご確認ください。